『ママ、ぼくね、いつも一人で歩いている時歌っているんだけど、
今日ね、もしかしたら空耳かもしれないけど、勘違いかもしれないけど、
気のせいかもしれないけど、拍手が聞こえたよ。』

目を輝かせ息子が言った一言に、私は自分の幼少期を思い出した。

本当は学芸会でやりたい役があったのに。
本当はみんなの前で発表したいことがあったのに。

恥ずかしさに負けては、
自宅で母親が帰宅するまで一人、テーブルをステージにして
歌って踊っていた。マンションの外に見える街の明かりが、
沢山のペンライトに見えて。
衣装は父親のTシャツドレスに、母親の靴下手袋。

目を瞑ると聞こえてくる大歓声。
そんなことを繰り返し、イメージの中だけで
私は沢山のスポットライトを浴びてきた。

息子と私で違うのは、息子は実際声に出して歌っているところ（笑）
ご近所の迷惑にならないようにとまずは注意すべきことかもしれないが、
その注意をためらうような、自分の中での矛盾が起こることがしばしばある。

個人的な周りを考えない私だけの意見を息子に言うとするならば。

最高じゃん！それ、空耳でも気のせいでもないよ！きっと沢山の人がくれた本当の拍手だよ！
って言うだろう。自分だけのステージ、沢山のスポットライトを浴びてキラッキラに輝いて欲しい。

現実で辛いことがあっても、たとえ何かに失敗して落ち込んでも、
立ち上がって自分のステージに戻ってきてほしい。
逃げ場としてではなくて、明日に向けて背中を押してもらう自分だけのステージ。

みなさんの心の中にも、そんなステージはありますか？

AYAKA FUKANO

AYAKA FUKANO(絵描き)   東京生まれ。思春期の多感な時期をドイツで過ごし、アートに初めて触れる。 幼い頃からの感受性の強さをアートにぶつけ、世の中に溢れても困らない愛を伝える。 instagram: HP:ayahundred