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【連載:THE DAY】vol.54-HELLO AGAIN

post date:2018.12.04

こんにちは。
冷えた朝は、夜中にはいだであろう布団の掛かっていない足先で、
どこかへ行ってしまった布団を探し、器用にまた掛け直す。
起きたくない頭とは裏腹に、よくもこんなに足先は器用に動くものだなと感心しながらもまた夢の中へ。
こんなこと、もう何日繰り返しているのだろうか。
新入社員だった年は、あんなにも一年過ぎるのが遅かったのに。
今や数年前のことを昨日のことかと錯覚するくらい日々はあっという間に過ぎていく。
きっとこの数日の私の朝の行動は、本当はもう何年も繰り返していることなのかもしれない。
そんなことを最近はふと思う。

私は絵を描くようになってから、被写体によく自分が興味を持った歴史上の人物を描いてきた。
大きな声ではとても言えないが、世間知らずの私の中にいる歴史上の人物は、とても少ない。
絵を描くようになって知った世界で気になった芸術家、幼少期にこんな人になれたらいいなと憧れた人、
そして、生きている中できっかけをもらって出会った人などである。

ある時、一枚の写真と出会い、その中に映る女性を見て、
あぁなんておばあちゃんに似てる人なんだろうと惹きつけられた。
写真の中の女性は、囚人が持たされるような番号を持って写っていた。

今や、調べるなんてインターネットを頼ればきっと一瞬でできること。
でも私は、おばあちゃんに似ていると思った彼女が
もしかしたら何か悪いことをした歴史上の人物なのかもしれないと、
調べるということを反射的に拒否した。

そこから数年。
仕事のやりとりをしていた友人から、
ある2枚の画像が送られてきた。
一枚はマーチンルサーキング牧師。
そしてもう一枚は私があの時見た写真だった。
そんな二枚の画像に添えられていた友人の言葉、
「この二人のことは覚えておいてほしい」

思わず、あ!と口に出してしまった。
そう、あの時知ることを拒否した女性のことを、
こうして友人によって私は知ることになる。

n01

彼女の名前はローザ・パークス。
アフリカ系アメリカ人公民権運動活動家。
1955年にアラバマ州にて公営バスの運転手の命令に背いて白人に席をゆずるのを拒み、
人種分離法違反という容疑で逮捕されてしまう。彼女の逮捕によりモンゴメリー・バス・ボイコット事件が勃発。
アフリカ系アメリカ人による公民権運動の導火線となったことで、のちに彼女は米国史における文化的象徴とみなされ、
公民権運動の母と呼ばれる。

彼女の勇気ある行動によって逮捕された際に撮影された一枚の写真を見た私は、
時を超えて、その一枚で彼女を反射的に罪人だと思ってしまったのである。
なんと残念なことだろうか。
きっとこうして友人に教えてもらわなければ、私の生きる中で何か接点やきっかけがない限り、
私は彼女のことを知ることができなかった。

おばあちゃんと友人が、こうして私に正しいことを教えてくれたのだと、
例えようのない思いが込み上げた。

そんな話をおばあちゃんの娘である私の母に話した時のこと。
母はいつも私の突拍子もない話を聞くと、なんでも知っていたかのような返事をする。
まるで「ふふふ、やっとたどり着いたのね」と言わんばかりの。動じない。
そして母はこう言った。
「おばあちゃんもね、とっても強い女性だったのよ。助産師さんだったの。」

こんなにも近いようなつながりを感じて生きてきた私だったが、
おばあちゃんの生前の職業を知ったのはこの時が初めてだった。

n02

そして、おばあちゃんの話を聞きながら、なぜ今私がこのような活動をしているのかが、
少し分かった気がした。

一枚の写真がきっかけで、私は2人の女性の人生を少しだけ覗く機会を与えてもらった。
そして、また自分の中で考えるきっかけももらったのである。

さらっと過ごしてしまえばきっとなんてことない出来事。
でも私にとっては、とても意味のある出来事だったのである。
人間は後悔することも失敗することも、人生の中で避けては通れない。
しかし、その出来事全てに必ず意味があり、必要な時にはこうして気づきを与えてくれる。

改めて、そう思えた。
あばあちゃん、久しぶりね。
ありがとう。

AYAKA FUKANO
 
 
 
 
 
 
 
 

Ayaka_01


AYAKA FUKANO(絵描き)


 
東京生まれ。思春期の多感な時期をドイツで過ごし、アートに初めて触れる。

幼い頃からの感受性の強さをアートにぶつけ、世の中に溢れても困らない愛を伝える。

instagram:ayahundred
 
HP:http://ayakafukano.com
 
 
 
 


Noriko Hirose

編集長【写真】

Nstyle主宰。航空会社の客室乗務員から、アルマーニ・ジャパンに入社、アパレルの世界へ。その後、タレントのスタイリストとして活動。現在は“女子力”を提案するスタイルプロデューサーとしてイベントや商品のプロデュース、ファッションブランドコンサルティングをはじめ、ファッション、ビューティー、ライフスタイル情報を雑誌・ラジオ等で発信している。
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