この話は、友人にはたまにするのだが。

私は時々”天使”に会うことがある。

子供を産んでから会うようになった。

”天使”と言っても姿形は様々で、

私が勝手に”天使”と呼んでいるだけである。

決して何かの勧誘でも、宗教じみた話をしようとしているわけでもない。

初めての天使に会ったのは、息子を産んで数ヶ月のこと。
寒い季節が、慣れない土地で暮らし始めた私をより一層ブルーな気持ちにしていた頃だった。

用事を済ませ、電車で帰宅している中、私はベビーカーの中で眠る息子を見ながらボーっと考えごとをしていた。
ふと気づくと、隣に座っていた女性が私に話しかけている。

声が小さく聞こえずらかったが、最初に拾った言葉が『子育て大変よね』であった。

今思えば、ただの世間話だったのかもしれない。
しかし、その時その瞬間の私にとって、そこから彼女が話してくれた言葉たちが、とても必要だったのである。

『子育ては大変。でもね、この子は地球のみんなの大事な宝だから、みんなのためにも、あなたがこの子の専属リーダーとなって愛情沢山育ててあげてね。辛くなったら、周りに相談することよ、助け合いなんだからね。頑張ってね。』

優しい優しい笑顔で、優しい言葉をかけるその女性は、話に夢中になって、気づいたら彼女の降りるべき駅を乗り越していた。

おっといけない、と彼女は照れ笑いをし、次の駅で降りると、電車の外から私たち親子が見えなくなるまで、ずっと手を振り続けていたのである。

私は天使に会ったのだ。

つづく。

AYAKA FUKANO(絵描き)   東京生まれ。思春期の多感な時期をドイツで過ごし、アートに初めて触れる。 幼い頃からの感受性の強さをアートにぶつけ、世の中に溢れても困らない愛を伝える。 instagram: HP:ayahundred